今回の記事では、そんな悩める公務員の方向けに、公務員が利用できる育児支援制度「部分休業」や「短時間勤務」の違いについて、地方公務員制度をもとにまとめたいと思います。
・産休をとる予定だけど、制度のことを人事課に聞きにくい
・男だけど子育て支援制度を利用したい
休業制度に関する法律
地方公務員法では、地方公務員の休業について、次のように定められています。
第二十六条の四 職員の休業は、自己啓発等休業、配偶者同行休業、育児休業及び大学院修学休業とする。
2 育児休業及び大学院修学休業については、別に法律で定めるところによる。
※出典:「地方公務員法」
どれも職員が申請すれば、公務に支障がない範囲で、休業することが認められる制度です。
ここでは「自己啓発等休業(大学課程の履修や国際貢献活動などのための休暇)」「配偶者同行休業(配偶者が外国に滞在するのに同行するための休暇)」「大学院就学休業(教諭等が大学院の課程を履修するための休暇)」については、本筋と異なりますので、詳しくは触れません。
第2項で「育児休業及び大学院修学休業については、別に法律で定めるところによる」と書かれているとおり、育児休業については「地方公務員の育児休業等に関する法律」で詳しく定められています。
「育児休業」「育児短時間勤務」「部分休業」の違いを簡単に解説
「地方公務員の育児休業等に関する法律」では、育児に関する3つの制度「育児休業」「育児短時間勤務」「部分休業」について定められています。3つの制度の違いを、簡単に表にまとめると、以下のようになります。
対象 | 勤務 | 給与 | |
育児休業 | 子が3歳に達するまで | 全てを免除 | 無給。共済組合から手当てが支給される |
育児短時間勤務 | 小学校就学前まで | 1日あたり4時間など、勤務時間を短縮して勤務 | 勤務に応じて支給 |
部分休業 | 小学校就学前まで | 1日2時間を上限に勤務を免除 | 休業分を減額して支給 |
もっと詳しく知りたい!という方は、以下でそれぞれの制度について詳しく解説していきますので、ぜひそのまま記事に目を通してみてください。
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「育児休業」について詳しく解説
職員は、子どもを育てるために、任命権者の承認を受けて、子どもが3歳になる日まで、育児休業を取得することができます。
配偶者が仕事をしている、していないにかかわらず取得できますし、夫婦ともに公務員の場合、同じ時期に同時に育児休業を取得することも可能です。
育児休業の取得は、1人の子どもにつき原則1回ですが、夫は妻が産後休暇を取得している間に育児休業を取得した場合もう1回取得することができるなど、条例等で例外が定められています。
育児休業期間の間は、給与が支給されませんが、期末手当・勤勉手当は基準日以前6ヶ月以内の期間において勤務実績があれば支給されます。ただし、算定の基礎となる在職期間等から育児休業の一定期間(期末手当は1月を超えた場合は2分の1、勤勉手当は全期間)が除算されます。
また、給与が支給されないかわりに、地方公務員共済組合から育児休業手当金が支給されます。この点は、民間の雇用保険と同様の処遇ですね。
気になる手当の金額ですが、令和2年11月現在、育児休業の最初の180日間は報酬日額の67%、その後は1歳になる日まで50%の額が支給されます。パパママ育休制度プラスに該当する場合は、1歳2か月まで手当金を受け取ることができます。
ちなみに、報酬日額とは、標準報酬月額の1/22の金額です。
「育児短時間勤務」について詳しく解説
小学校就学前までの子どもを育てる職員は、複数の勤務形態から1つを選択し、希望する日や時間帯に勤務することができます。「育児短時間勤務」についても、配偶者の仕事の有無は問いませんし、公務員の夫婦が同時期に同時に取得することもできます。
取得は1ヶ月以上1年未満で申請します。回数制限はなく、子どもが小学校に入学するまで毎年継続して取得することもできます。前回の育児短時間勤務取得終了日から1年以上が経過していれば、再度取得することもできます。
具体的な勤務形態は、1日の勤務時間が7時間45分の場合、
- 週5日、1日3時間55分勤務(計19時間35分)
- 週5日、1日4時間55分勤務(計24時間35分)
- 週3日、1日7時間45分勤務(計23時間15分)
- 週3日、うち2日は7時間45分、1日は3時間55分勤務(計19時間25分)
です。もちろん、勤務時間の長短によって給与は増減しますが、期末手当・勤勉手当は減額されるものの、ともに支給されます。期末手当は、短縮された勤務時間の短縮分の1/2に相当する期間が在職期間から除かれて計算されます。勤勉手当は、短縮された勤務時間の短縮分に相当する期間が除かれて計算されます。
昇給に影響はありません。
住宅手当等は支給されますが、通勤手当は1か月あたりの通勤回数が10回未満の場合は半額となるので、注意してくださいね。
「部分休業」について詳しく解説
小学校就学前までの子どもを育てる職員は、1日の勤務時間の一部について勤務しないことができます。「育児短時間勤務」と併用はできません。
「部分休業」についても、配偶者の仕事の有無は関係ありませんし、夫婦で公務員の場合は同時期に同時に取得することもできます。(各々2時間を上限とする)
具体的には、1日2時間を上限として30分単位で勤務しないことができます。
給与は、部分休業をした翌月の給与から勤務しなかった時間数の実績にに応じて勤務1時間当たりの給与額が減額されて支給されます。
期末手当については,部分休業の期間は在職期間から除算されません。勤勉手当は、基準日(6月1日,12 月1日)以前6ヶ月の期間における部分休業の取得時間数を、日に換算した日数が 30 日を超える場合は,部分休業ををした期間を勤務期間から除算します。
後述する育児時間と合わせても1日2時間以内しか認められないため、併用する場合は注意してくださいね。
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その他の育児に関する休暇
その他にも「特別休暇(有給・職務専念義務免除)」で、以下のような育児に関する休暇を利用することができます。
- 出産休暇:原則産前6週間・産後8週間
- 保育時間:生後1年未満の子どもの保育のために必要と認められるとき(授乳等を行う場合、1日2回・各30分以内)
- 子の看護休暇:小学校就学前の子どもを看護するとき。1年間で5日以内
まとめ:子育てに関する休暇を上手に使おう
以上、地方公務員の休暇についてまとめてきました。
任命権者は、休暇の請求があった場合、請求した職員の業務を処理するための措置(業務分担の変更、職員の配置換え等)を講ずることが困難である場合を除いて、承認しなければなりません。
制度上は1ヶ月前までに請求すれば取得できる休暇が多いですが、急に「1ヶ月後から休みます!」となると代替措置の検討もできず、職場に多大な迷惑をかけることになりかねませんし、職場内の反感も買います。
「この人は仕事ができない人だ」「想像力がなくて、自分勝手だ」というらく印を押されかねません。
可能な限り早い時期に、所属長に休暇取得について相談するようにしてくださいね。